経理の年収はどう決まる?求人票の見方を事務所目線で解説
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「経理に転職したいけれど、年収はどのくらいになるのだろう」——求人票を見比べても、同じ「経理」なのに提示額が100万円以上違うことがあります。この差がどこから来るのか分からないまま応募すると、入社後に「思っていた条件と違った」ということになりかねません。
経理の年収は「経験年数」よりも「任される業務の範囲」で決まります。同じ経理でも、伝票入力までの人と決算書を作れる人では評価が変わります。求人票の金額を見る前に、その会社が経理に何を任せようとしているかを読み取ることが先です。
この記事では、税理士事務所で多くの会社の経理を見てきた立場から、年収が決まる仕組みと、求人票のどこを見れば実態が分かるかを解説します。
経理の年収は「業務の範囲」で決まる
経理という職種は、会社によって任される範囲が大きく違います。ここが年収差の最大の要因です。
経理の業務は3つの段階に分かれる
実務上、経理の仕事はおおむね次の3段階に整理できます。
| 段階 | 主な業務 | 求人票での表現 |
|---|---|---|
| 入力・処理 | 伝票起票、経費精算、入出金の記録 | 経理事務、経理補助 |
| 月次・管理 | 月次決算、売掛買掛の管理、資金繰り表の作成 | 経理担当、月次決算まで |
| 決算・開示 | 年次決算、税務申告の対応、監査対応 | 決算担当、財務会計、経理リーダー |
年収に最も影響するのは、「決算をどこまで自分で回せるか」です。入力・処理の段階までであれば、会社としては一般事務との差をつけにくくなります。一方、決算を任せられる人材は替えが利きにくいため、評価が上がります。
会社側から見ると「代わりがいるか」で決まる
関与先の会社を見ていて感じるのは、給与水準を決めているのは「その人が抜けたときに困る度合い」だということです。
- 入力業務は、引き継ぎ資料があれば他の人でも回せる
- 月次決算は、担当者が抜けると月次の締めが遅れる
- 年次決算は、担当者が抜けると決算そのものが止まる
求人票の金額は、この「困る度合い」を反映しています。金額だけを比べるのではなく、その会社が経理に何を期待しているのかを読むほうが実態に近づきます。
公表されている年収データと、その限界
年収を調べると、さまざまな数字が出てきます。ただし「経理職だけの平均年収」は、公的な統計では公表されていません。この点を理解しておかないと、数字に振り回されます。
参考にできる公表データ
転職サービスdodaが公表している「平均年収ランキング2025」では、正社員全体の平均年収が示されています。
| 区分 | 平均年収 |
|---|---|
| 全体 | 429万円 |
| 20代 | 365万円 |
| 30代 | 454万円 |
| 40代 | 517万円 |
| 50代以上 | 601万円 |
調査期間は2024年9月から2025年8月末まで、約60万件の正社員データが対象とされています。
これは全職種の平均であり、経理職の数値ではありません。経理職に限定した平均年収は、公的統計としては公表されていません。転職サイトが掲載している「経理の平均年収」は、各社が自社の求人・登録者データを独自に集計したもので、集計対象が異なれば数字も変わります。
なぜ「経理の平均年収」を鵜呑みにできないのか
理由は、前の章で述べた業務範囲の幅にあります。
- 「経理補助」と「経理マネージャー」が同じ「経理」として集計されることがある
- 企業規模によって想定される業務範囲が違う
- 求人票の提示額は幅で書かれることが多く、下限で採用されることもある
平均値は目安として見つつ、自分が応募しようとしている求人が、どの段階の業務を求めているのかを確認するほうが実用的です。
求人票から実態を読み取る方法
求人票には、金額以外にも判断材料が書かれています。事務所側から会社を見ていると、次の点に会社の実態が表れます。
確認しておきたい項目
- 経理部門の人数 — 1人経理か、複数体制か。1人経理は範囲が広くなる
- 決算業務の記載 — 「決算補助」なのか「決算業務」なのかで責任範囲が違う
- 税理士との関係 — 顧問税理士がいる場合、申告書作成まで求められないことが多い
- 使用している会計ソフト — クラウド会計を導入している会社は、業務が整理されている傾向がある
- 提示額の幅 — 上限に近い額を得るには何が必要か、面接で確認できる
面接で聞いておくとよいこと
条件面の質問はしにくいものですが、業務範囲の確認は、入社後のミスマッチを防ぐために必要です。次のような聞き方であれば、条件交渉ではなく業務理解の質問として受け取られます。
- 「月次決算はどのくらいの日程で締めていらっしゃいますか」
- 「年次決算では、どこまでを社内で対応されていますか」
- 「入社後、まずどのあたりの業務からお願いされる想定でしょうか」
やらないほうがよいこと
- 提示額の上限だけを見て応募先を決める
- 「経理」という職種名だけで業務内容が同じだと考える
- 年収の平均値と自分の希望額を単純に比較する
年収を上げるために何を身につけるか
業務範囲で年収が決まるのであれば、上げる方法は「任される範囲を広げること」になります。
優先順位が高いもの
- 決算を一通り経験すること — 月次から年次へ、経験の幅が評価に直結する
- 日商簿記2級 — 応募段階で足切りに使われることがあり、持っていると選択肢が増える
- Excelの実務的な操作 — 関数やピボットテーブルなど、集計を効率化できること
- 会計ソフトの操作経験 — 特定の製品名より、仕組みを理解していることが重要
事務所側から見ていて感じるのは、簿記2級を持っていることと、実務で使えることは別だということです。試験は正解のある問題を解きますが、実務では「この取引をどう処理するか」を自分で判断する場面が出てきます。資格取得後は、実際の帳簿に触れる機会を作ることが次の一歩になります。
求人票だけを見ていると、自分の経験がいくらで評価されるのかは分かりません。「今の経歴で、どのくらいの求人が現実的か」を知りたい段階なら、転職を決める前でもエージェントに相談できます。
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の転職判断や条件交渉について保証するものではありません。記載した統計データは執筆時点で公表されているものに基づいています。実際の求人条件は企業ごとに異なりますので、応募先の情報をご確認ください。
参考:doda「平均年収ランキング2025」(調査期間:2024年9月〜2025年8月末)
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