税理士事務所スタッフ歴10年

経理の仕事と転職を、
現場の目線でお伝えします

「未経験でも入れる?」「簿記は本当に必要?」「年収はどのくらい?」
求人票では分からない経理のリアルを、多くの会社の経理を見てきた立場から解説します。

机をはさんで経理の相談をしている様子のイラスト

経理未経験の転職に年齢は関係あるのか|35歳の壁の正体

経理未経験の転職に年齢は関係あるのか|35歳の壁の正体

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「未経験から経理を目指したいが、この年齢では無理だろうか」——実際によくいただく不安です。求人を眺めていると「35歳まで」「若手歓迎」といった文字が目に入り、そこで手が止まってしまう方は少なくありません。

先に結論

求人に書かれた年齢の上限は、あなたの能力を評価した結果ではありません。募集する側が法律上どの例外規定を使ったかで自動的に決まっています。逆に言えば、年齢の上限が書かれた求人と、書かれていない求人とでは、企業が求めているものがそもそも違うということです。この違いを知ると、応募先の選び方と伝え方が変わります。

この記事では、税理士事務所で10年、多くの会社の採用と経理の現場を見てきた立場から、求人票の年齢表記が何を意味するのかを法令にさかのぼって解説します。そのうえで、年齢を理由に諦める必要がない場合と、正直に戦い方を変えたほうがよい場合を分けて整理します。

求人に年齢制限を書くことは、原則として禁止されている

意外に思われるかもしれませんが、募集・採用で年齢制限を設けることは法律で禁止されています。労働施策総合推進法という法律の第9条によるもので、平成19年10月1日から義務化されています。

つまり「35歳まで」と書かれた求人は、例外規定に当てはまる場合にだけ認められている、特別な求人ということになります。何となく若い人が欲しいから書いている、というものではありません。

ここを誤解している人が多い

「年齢不問」と書かれているのは、企業が親切だからではなくそれが法律上の原則だからです。むしろ年齢が書いてあるほうが例外です。求人票を見るときは「なぜこの会社は上限を書けたのか」と考えると、企業の意図が読めるようになります。

年齢制限が認められる6つの例外

ハローワークに求人を出す際、企業は年齢制限を設けるなら次のいずれかの理由を選ぶ必要があります。実際の求人申込み画面に表示される選択肢です。

例外事由 どんな求人か 設定できる範囲
定年を上限 定年年齢を上限に、無期雇用で募集する 上限のみ
法令の規定により年齢制限がある 労働基準法などで年齢が定められている業務 下限のみ
キャリア形成 長期勤続でキャリアを育てる前提で若年者を無期雇用で募集する 上限のみ
技能・ノウハウの継承 特定の年齢層が相当程度少なく、技能を引き継ぐ必要がある 30〜49歳の範囲で上下限
芸術・芸能の分野 表現の真実性などの要請がある場合 上下限
高年齢者等の雇用促進 60歳以上や就職氷河期世代など、国の施策の対象者に限定する 60歳以上の下限など

経理・事務の求人で「○歳まで」と書かれている場合、そのほとんどが3つ目の「キャリア形成」です。ここが今回のいちばん重要な部分なので、次で詳しく見ます。

「35歳まで」の求人が意味していること

「キャリア形成」を理由に年齢制限を設ける場合、企業にはいくつかの条件が課されます。厚生労働省のQ&Aによると、この例外は基本的に35歳未満の若年者を想定したものとされています。「35歳」という線をよく見かけるのは、これが理由です。

そして見落とされがちなのが、次の条件です。

年齢制限を書いた求人が背負う条件
  • 期間の定めのない労働契約であること(有期契約では、この例外は使えない)
  • 職業経験を問わないこと
  • 昇給やキャリアパスなど採用後の処遇が新規学卒者と同等であること

読み替えると、こういうことになります。「35歳まで」と年齢で絞った求人は、経験を求めることができません。 経験者を優遇したいなら、年齢を書くこと自体ができないのです。

実際、厚生労働省のQ&Aでは「経験者優遇」「経験があれば尚よい」といった表現も、この例外を使った求人では法の趣旨に照らし適当ではないとされています。資格についても、実務経験を要する資格を条件にすると要件を満たさなくなります。

つまり、こう考えられる

「35歳まで・未経験歓迎」という求人は、未経験者を育てる前提で枠を用意した求人です。一方で年齢が書かれていない求人は、経験や実力で判断される求人です。年齢の記載がないことは、あなたが不利という意味ではなく、評価軸が経験に移っただけと読むのが正確です。

なお、経験不問かつ新規学卒者と同等の条件であれば「40歳未満を募集」という求人も認められる場合があります。ただし、キャリア形成に要する期間が定年までの勤続可能期間に比べて短い場合には、この例外に当たらないとされています。

年齢によって、戦い方を変える

ここまでを踏まえると、応募先の選び方は年齢によって変わります。ごまかさずに書きます。

35歳未満の場合

「未経験歓迎」の枠を正面から狙えます。 この年齢層に向けて、経験を問わない求人が制度上つくられています。簿記を学習中であることや、前職での正確さを示す材料があれば十分に土俵に乗ります。迷っている時間がもったいない層です。

35歳以上の場合

「未経験歓迎」の枠は減りますが、応募先が消えるわけではありません。 狙うのは年齢が書かれていない求人です。ここでは経験で判断されるため、経理そのものの経験がなくても「隣接する経験」を翻訳して伝えることが勝負になります。請求書を扱った、売上を集計した、入金を消し込んだ——職種名が経理でなくても、実務として近いことをしていた方は多いはずです。

税理士事務所で多くの会社を見てきた実感として、40代で経理に移った方は珍しくありません。ただ、共通していたのは「未経験です」から話し始めていないことでした。前職で数字や書類をどう扱ってきたかを具体的に語れる方が、結果として採用されています。

やってしまいがちなこと
  • 年齢制限のある求人にばかり応募し、書類で落ち続ける
  • 職務経歴書の冒頭に「経理未経験」と書いてしまう
  • 隣接業務の経験を「経理ではないから」と省いてしまう

未経験・高年齢でいちばん効く伝え方

ここが本題です。未経験で年齢も上、という条件で戦うとき、実際にいちばん効くのは「AIを使って業務を効率化できる」という切り口だと考えています。

理由は単純で、経理の現場には手作業がまだ大量に残っているからです。表計算ソフトへの転記、毎月同じ形式の資料づくり、複数のファイルの突き合わせ——こうした作業を減らせる人は、経験年数とは別の軸で評価されます。年齢を重ねていることが不利にならない、数少ない土俵です。

伝え方のコツ

「AIが使えます」と能力として言うのではなく、「御社のこの業務なら、こう効率化できるかもしれません」と、相手の業務に当てはめて話すのが要点です。目指すのは自分を売り込むことではなく、相手に「ここをこうしてもらえれば楽になるかもしれない」と考えてもらうことです。そこまで持ち込めれば、面接は評価の場から相談の場に変わります。

未経験であることは、この文脈ではむしろ材料になります。今のやり方に慣れていないからこそ、「なぜこの作業を手でやっているのか」という疑問を素直に出せるからです。長く現場にいる人ほど、その手順を当たり前だと思って疑わなくなります。

ただし、相手を選びます

この切り口が効くのは、面接官がその価値を理解している場合に限られます。ここは正直に書いておきます。決裁者や、現場の非効率を実感している責任者が相手なら強く刺さりますが、今のやり方を変えたくない相手には響きません。それどころか「入ってすぐやり方を変えようとする人」と受け取られることもあります。

そのため、面接の相手が誰かを見て出し方を変えます。反応が薄いと感じたら深追いせず、正確さや続けられることの話に戻すのが安全です。相手の理解度を測ってから踏み込む、という順番を守ってください。

どの作業に効率化の余地があるかは、実際の業務の中身を知らないと具体的に話せません。税理士事務所を志望する場合は税理士事務所スタッフの1日の仕事の流れで、どの作業にどれだけ時間がかかっているかを確認しておくと、面接で名指しして話せるようになります。

なお、ここで言う効率化は大がかりなシステム開発ではありません。定型のメール文面を用意する、資料の下書きをつくる、長い資料を要約する——その程度でも、毎月繰り返す作業なら十分に価値があります。経理に資格はいらないと言われる理由でも触れているとおり、採用側が見ているのは資格の有無より「作業を改善しようとするか」です。

年齢より先に見られていること

採用する側の立場で言うと、経理で本当に気にしているのは年齢そのものではありません。次の3点です。

  • 締切を守れるか——経理の仕事は締日と申告期限で動きます。期限に間に合わないことが最も困ります
  • 分からないことを聞けるか——独断で処理を進められると、後の修正が何倍にも膨らみます
  • 同じ作業を丁寧に続けられるか——派手さより、毎月同じ精度で処理できることが評価されます

これらはいずれも年齢と直接の関係がなく、むしろ社会人経験の長い方のほうが有利に働くことがあります。年齢を不利な材料としてではなく、これまでの働き方の裏づけとして提示できるかどうかが分かれ目です。

この記事のまとめ
POINT 01
求人に年齢制限を書くことは法律で原則禁止されており、書けるのは例外に限られる

POINT 02
経理・事務の年齢制限はほぼ「キャリア形成」の例外。基本は35歳未満が想定されている

POINT 03
年齢で絞った求人は経験を問えない。つまり未経験者を育てる前提の枠である

POINT 04
年齢の記載がない求人は不利なのではなく、評価軸が経験に移っただけ

POINT 05
未経験・高年齢はAIでの効率化を「御社ならこうできる」と相手の業務に当てて話す

POINT 06
採用側が見ているのは締切を守れるか・聞けるか・続けられるかで、年齢ではない

年齢の表記は、あなたへの評価ではなく求人側の事情です。その読み方さえ分かれば、応募先を選ぶ精度が上がり、無駄な書類落ちを減らせます。

年齢の枠がある今のうちに動くなら

ここまで見てきたとおり、経験を問わない求人が制度上つくられているのは35歳未満の層です。この年齢に当てはまるなら、枠がある間に動くほうが選択肢は多く残ります。

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※対象は35歳までで、東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・兵庫・京都・愛知・福岡にお住まいの方です。それ以外の場合は登録できてもご案内が難しいことがあります。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の採用結果を保証するものではありません。法令の解釈や個別の求人の取扱いについては、管轄のハローワーク・労働局にご確認ください。記載内容は執筆時点で公表されている資料に基づいています。

参考:厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」ハローワークインターネットサービス「年齢制限該当事由について」厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」(令和7年4月1日現在)

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Posted by aile