税理士事務所の1年の仕事スケジュール|繁忙期はいつか
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税理士事務所の求人を見ていると「繁忙期あり」という言葉をよく目にします。ただ、それがいつ・どのくらい忙しいのかまでは書かれていないことがほとんどです。
忙しいのは11月から3月、そして5月です。なかでも2月中旬から3月15日の確定申告が最も重い時期になります。
これらの山は期限が法律で決まっているため動かせません。だからこそ山が来る前にどれだけ前倒しできるかが事務所の課題であり、未経験者でも提案しやすい部分になります。
この記事では、税理士事務所で10年働いてきた立場から、1年の仕事の流れを時期ごとに解説します。あわせてそれぞれの時期にどこを効率化できるかを書き添えます。1日単位の流れは税理士事務所スタッフの1日の仕事の流れをご覧ください。
なぜ繁忙期がずらせないのか
先に前提を押さえます。事務所が忙しくなる理由は仕事量そのものより、期限が固定されていることにあります。主な期限は次のとおりです。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 法定調書・源泉徴収票の提出 | その年の翌年1月31日まで |
| 所得税の確定申告 | その年の翌年2月16日から3月15日まで |
| 法人税の確定申告 | 事業年度終了の日の翌日から2月以内 |
ここで注目したいのが法人税だけ日付が決まっていないことです。会社ごとに決算月が違うため、法人の申告は1年中発生します。つまり事務所は、毎月どこかの法人の申告を抱えながら、年明けに個人の確定申告が重なるという構造になっています。
| 忙しさ | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 最も重い | 2月中旬〜3月15日 | 所得税の確定申告 |
| 次に重い | 12月 | 年末調整(顧問先の大半をまとめて処理) |
| 重い | 5月 | 3月決算法人の申告 |
| 重い | 11月 | 9月決算法人の申告 |
つまり11月から3月までが忙しい期間で、そのなかに山が複数あるという構造です。5月にもう一度大きな山が来ます。
上記の期限が土日祝に当たる場合は、翌開庁日などにずれます。実際の期限は年によって変わるため、手続きの際は必ずその年の国税庁の案内を確認してください。この記事では年ごとに変わる日付は載せていません。
1月〜3月:1年で最も重い時期
前年12月に行った年末調整の結果をもとに、源泉徴収票や法定調書をまとめて提出します。あわせて、市区町村へ給与支払報告書を送り、償却資産の申告も行います。1月31日という期限に複数の手続きが集中します。
効率化の余地: 提出物の種類が多く、「どの顧問先の何が終わっていないか」の管理が煩雑になります。ここは判断ではなく進捗の追跡なので、一覧化して残りを自動で拾う仕組みと相性がよい部分です。未経験でも提案しやすい切り口です。
個人事業主や不動産所得のある方などの申告が、2月16日から3月15日までの1か月に集中します。事務所によっては、この時期だけで年間の相当な業務量を処理します。
資料が期限ぎりぎりに届く顧問先もあり、後半になるほど作業が積み上がります。3月決算法人の準備もこの時期から始まります。
効率化の余地: この山を軽くする方法は「1〜3月に頑張ること」ではなく「前年のうちに終わらせておくこと」です。毎月の記帳が追いついていれば、申告時にやるのは確認だけで済みます。平常月の記帳をいかに自動化しておくかが、そのまま繁忙期の負荷を決めます。ここが本質的な改善点です。
この時期の働き方は事務所によって差が大きい部分です。面接では「確定申告期の残業はどのくらいか」「個人の申告を何件くらい担当するか」を確認しておくと、入所後のギャップが減ります。件数は事務所の方針によって大きく変わります。
4月〜8月:5月にもう一度山が来る
日本では3月決算の会社が多く、その申告期限は事業年度終了の日の翌日から2月以内、つまり5月末に集中します。確定申告が終わった直後に、次の山が来ることになります。
効率化の余地: 決算では毎期ほぼ同じ資料を作ります。前期の資料を土台に当期の数字へ差し替える工程は定型化しやすく、作成の手順そのものを固定できれば時間が縮みます。
住民税の通知が届き、顧問先へ案内します。前年の所得にもとづいて税額が決まるため、金額について質問を受けることがあります。
効率化の余地: 毎年同じ時期に同じ案内を送る類の仕事です。案内文の型を作っておけば、毎年ゼロから書く必要はなくなります。
源泉所得税の納付(納期の特例を使っている場合)などはありますが、1年のなかで最も余裕がある時期です。夏季休暇を取りやすいのもこのあたりです。11月から3月までが忙しい期間になるため、落ち着いて動けるのは実質この夏場だけです。
効率化の余地: 改善に手をつけられる唯一の時期と言えます。繁忙期の最中に仕組みを変えるのは現実的ではないため、効率化の提案が実際に通りやすいのはここです。面接で改善を語るなら、この時間の使い方まで触れられると具体性が出ます。
9月〜12月:11月と12月に山が来る
各決算月の法人の対応を進めながら、年末調整に向けた案内の準備が始まります。ここで前倒しできた分だけ、年末が楽になります。
効率化の余地: 年末調整に必要な書類を顧問先から集める作業は、早く動くほど成功します。誰から何が届いていないかを追う工程は、前述の督促と同じく仕組み化しやすい部分です。
9月決算の法人の申告期限が11月末に来ます。3月決算ほどではありませんが9月決算の会社も一定数あり、ここで1つの山になります。ここから3月まで、忙しい時期が続きます。
効率化の余地: 決算の作業は毎期ほぼ同じ手順です。5月の3月決算で作った手順をそのまま使えるため、一度型を作れば以降の決算すべてに効きます。
顧問先の大半をまとめて処理するため、12月は非常に忙しくなります。従業員の扶養状況や保険料控除などを確認し、1年の所得税を精算します。担当する顧問先の数と従業員数がそのまま作業量になり、書類に不備があればその都度やり取りが発生します。
なお、年末調整を自社で行っている会社もあります。給与計算をどこまで社内で完結させているかによって、事務所が関わる範囲は変わります。
効率化の余地: 時間を食うのは計算そのものではなく書類の不備のやり取りです。よくある記入漏れをあらかじめ案内しておく、チェックの観点を揃えておく——といった手前の工夫で後工程が減ります。多くの顧問先を同時に扱うため、進捗を一覧で管理できるかどうかで負荷が変わります。
1年を通して見えること
並べてみると、事務所の1年にははっきりした型があることが分かります。
- 忙しいのは11月から3月——最大の山は2月中旬〜3月15日の確定申告、次いで12月の年末調整
- 5月にもう一度山が来る——3月決算法人が多いため、確定申告が終わって一息ついた頃に再び忙しくなります
- 山は動かせない——期限が法律で決まっているため、繁忙期を後ろにずらすことはできません
- 山を軽くできるのは、山の前だけ——平常月に前倒しできた分しか楽になりません
- 改善に着手できるのは夏場だけ——実質的に手が空くのは7〜8月に限られます
1年の型を知っていると、「繁忙期は大変そうですが頑張ります」で終わらない話ができます。たとえば「繁忙期そのものを短くするのは難しいので、平常月の記帳を軽くしておくことが結果的に効くと考えています」——このように話せると、業務の構造を理解していることが伝わります。
未経験であっても、どこに問題があるかを分かっている人と、言われた作業をこなす人とでは、採用側の受け取り方が変わります。
「今のやり方は非効率ですね」と正面から指摘するのは避けたほうが無難です。相手の仕事を否定する形になるためです。「もし手が回っていない部分があれば、こういう形で減らせるかもしれません」という提案の形にとどめます。この加減については経理未経験の転職に年齢は関係あるのかでも触れています。
1年の流れが分かると、求人票の「繁忙期あり」が具体的に何を指すのかが読めるようになります。日々の業務の中身については、税理士事務所スタッフの1日の仕事の流れをあわせてご覧ください。
「未経験で繁忙期を乗り切れるか」「面接で何を確認しておくべきか」——判断に迷う部分について、個別にご相談いただけます。
本記事は筆者の実務経験にもとづく一般的な情報提供であり、すべての税理士事務所に当てはまるものではありません。担当範囲・繁忙の度合いは事務所ごとに大きく異なります。また、記載した期限は原則的な取扱いであり、休日等により実際の期日は年によって変わります。手続きの際は必ず最新の公式情報をご確認ください。
参考:国税庁「No.2020 確定申告」/国税庁「C1-1 法人税の申告」/国税庁「No.7411 法定調書の提出期限」
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